「運んだのは実運送会社なのに、なぜ当社が賠償するの?」 貨物利用運送事業者の責任の仕組み

貨物利用運送(水屋)を行っている事業者様から、よくこんなご相談をいただきます。 「実際に事故を起こしたのは下請けの実運送会社なのに、なぜ荷主への賠償を私たちがしなければならないのでしょうか?」
お気持ちは痛いほど分かりますが、これは単なる商慣習ではなく、法律で決められたルールです。 今回は、なぜ「運んでいない」利用運送事業者が責任を負うのか、その理由と対策について解説します。
1. 荷主から見れば「あなたが運送会社」だから
結論から言うと、利用運送事業者が荷主に対して責任を負うのは、「貨物利用運送事業法」という法律と、事業の許可基準でそう決められているからです。
① 法律上の契約責任 荷主にとって、契約の相手方はあくまで利用運送事業者(あなた)です。 荷主は「あなたに運んでもらうこと」にお金を払っており、どういう手段(自社便か下請けか)で運ぶかは、こちらの都合にすぎません。 そのため、法律では「誰がハンドルを握っていたか」に関わらず、契約を引き受けた事業者が最後まで責任を持つことになっています。
② 国土交通省の認可基準 事業を始める際に国へ届け出る「運送約款」でも、この責任は明確化されています。 「実運送中の事故であっても利用運送事業者が責任を負う」という内容になっていなければ、そもそも事業の登録(許可)が下りない仕組みになっています。
2. 「まずは賠償、あとで請求」が基本
では、自社に落ち度がなくても、すべての損害をかぶらなければならないのでしょうか? ここで重要になるのが「求償(きゅうしょう)」という手続きです。
基本的な流れは以下の通りです。
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荷主への対応: まず、契約者である利用運送事業者が、荷主に損害を賠償する。
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実運送会社への対応: その後、事故の原因を作った実運送会社に対して、支払った分を請求する(求償)。
つまり、最終的な負担は実運送会社に行きますが、「荷主への窓口」はあくまで利用運送事業者が務めるということです。
3. 最大のリスクは「求償できない」こと
この仕組みで一番怖いのは、「荷主には賠償金を払ったけれど、下請けの実運送会社からお金を回収できない」というケースです。
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実運送会社との契約書がない、または内容が不十分
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事故の責任所在があやふや
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相手方に支払い能力や保険加入がない
こうなると、ただ損害を負うだけになってしまいます。 「うちは利用運送だから、現場のことは知らない」では済まされません。現場を直接管理できない立場だからこそ、契約等の自衛策が重要になります。
まとめ:契約と保険の再確認を
トラブルを防ぐために、以下の3点を必ず確認してください。
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標準利用運送約款の内容を理解しているか
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協力会社(実運送事業者)との基本契約書を交わしているか
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相手方が適切な運送保険に入っているか(自社でも貨物賠償責任保険に入っておくとより安心です)
これらが整備されていれば、万が一の事故の際も、スムーズに解決へ導くことができます。
「契約書の内容が不安だ」「保険の範囲が合っているかわからない」という場合は、専門家へご相談ください。
引用・参考情報
動画での解説はこちら
執筆:行政書士法人あゆみ 松本 亜由美
